金について|相場|歴史|用途|化学的性質を解説

金(きん)は、人類史上最も古くから珍重されてきた金属のひとつです。

美しい輝きと不変の安定性は、古代の王侯貴族を魅了し、現代においてその電気的特性からスマートフォンやパソコンなどのハイテク電子機器に利用されています。

また、経済が不安定になると金の価格が高騰し「安全資産」として投資家からの注目も集めます。

本記事では、金の化学的性質、歴史における役割、現代社会での利用、そして最近の価格高騰の背景までを、専門的な知識をやさしく噛み砕いて紹介します。

高校生や化学に詳しくない方でも「へえ!」と楽しく読める内容です。

 第1章 金の化学的な特徴

金は元素記号 Au(ラテン語:Aurum=夜明けの輝き)、原子番号79の金属です。

特徴的なのは、誰もが一目でわかる「黄金色の輝き」。

金が黄金色に輝く理由は青い光を吸収するからです。

いろいろな色の光が混ざっている自然光が金の表面にあたると、青い色の光は吸収され、黄色や赤色が反射され、人間には黄金色に見えるのです。

安定性の高さ

酸素や水と反応しにくく、自然環境では錆びたり腐食したりしません。

その理由は、金原子の周りを取り巻く電子が原子核と強い相互作用で結ばれており、他の原子と化学反応しにくいからです。

銀のスプーンは空気中の酸素と結合(酸化)して黒ずみますが、金の指輪は何十年経っても酸化せず、変色しません。

延性と展性

金は非常に柔らかく、1グラムを延ばすと約3キロメートルの細線にできます。

また、1万分の1ミリほどの薄さに延ばせば「金箔」となり、京都・金閣寺や寺院の仏像装飾に使われています。

電気伝導性の高さ

金は、銅や銀に匹敵する電気の通しやすさを持ち、しかも酸化しないため、電子機器の端子やコネクタに最適です。

パソコンのメモリやスマートフォンのSIMカードにも金が使われています。

第2章 金が化学的に安定な理由

金の安定性は、原子核と電子の状態にその理由があります。

金の最外殻電子は、強く原子核に引き寄せられています。

そのため、イオンになろうとする力が非常に弱く単体で存在する方が化学的に安定なためです。

酸素や硫黄と結びつきにくく、酸化や腐食を起こしにくいのです。

この特性は、まさに自然界が金にのみ与えた絶妙な電子配置の恩恵であり、金が人類に愛され、貨幣や宝飾品、さらには精密機器に使われてきた最大の理由なのです。

第3章 人類の歴史と金

古代文明と金

古代エジプトでは、金は「太陽神ラーの肉体」とされ、王権の象徴でした。

ツタンカーメン王の黄金のマスクはその代表的存在で、3000年以上の時を経てもなお輝きを放っています。

また、メソポタミアやインダス文明でも金は取引や装飾品に用いられ、富と権力を誇示していました。

ギリシャ・ローマ時代

ローマ帝国は「オーリウス金貨」を発行し、帝国経済の基盤としました。

ローマの兵士や商人が金貨を持ち歩き、地中海全域の経済圏を形成したのです。

中世と錬金術

中世ヨーロッパでは「鉛を金に変える」錬金術が盛んに研究されました。

科学的には不可能でしたが、その試みの中で化学の知識が積み重ねられ、現代化学への礎となったのです。

近代の金本位制

19世紀から20世紀初頭にかけて、世界の通貨は金を基準に発行されました。

これが「金本位制」です。

国が持つ金の量が通貨価値の裏付けとなり、世界経済の安定に寄与しました。

現在は金本位制は廃止されていますが、金が「経済の基準」として意識され続けていることは変わりません。

第4章 現代社会と金の利用

電子機器

スマホ、パソコン、ICカードなど、電子部品の接点には必ず金が使われています。

ごく微量ですが、そのおかげで機器が長持ちし、故障を防いでいます。

医療分野

歯科用の詰め物やインプラントに金合金が使われるのは、腐食に強く、生体に害が少ないためです。

また、リウマチ治療薬「金チオリンゴ酸ナトリウム」は炎症を抑える作用があります。

芸術・工芸

日本の都市金沢は金箔生産で有名です。

食品にも使われており、祝いの席で金箔入りの酒を飲むのは、日本文化に根付いた「金=繁栄」の象徴といえるでしょう。

投資・資産保全

延べ棒や金貨は、インフレや通貨危機の際に価値を保つ資産として注目されます。

近年では金ETF(上場投資信託)や純金積立など、個人でも気軽に投資できる方法が増えています。

第5章 最近の金価格高騰とその背景

金価格はここ数年で大きく上昇しています。

高騰の理由は3つあります。

一つ目は、世界的な不安定さです。

戦争・金融危機・感染症などのリスクが高まると、投資家は金を待避資産に組み入れます。

二つ目は、インフレ対策です。

紙幣は発行量により価値が下がりますが、金は実物資産で絶対量が決まっており、価値が維持されやすいのです。

三つ目は、各国の中央銀行が金の保有を積極化したことです。

中国やロシアを中心に、ドル依存を減らすため金準備を増やす動きを強めています。

最近の金相場は、次に示すようなトレンドです。

  • 2020年:新型コロナウイルスの感染拡大で世界経済が混乱し、金は「安全資産」として買われ、1オンス=2000ドルを突破。
  • 2024〜2025年:インフレ懸念、米中対立、中東情勢の緊張などが背景となり、再び過去最高値を更新。

こうした背景により、金は「持っていれば安心」と考えられる唯一無二の存在となっています。

まとめ

金は、古代から現代に至るまで「変わらぬ輝き」を持ち続けてきました。

まとめますと、次のようになります。

  • 化学的に極めて安定し、錆びない
  • 人類の歴史を通じて、富・権力・文化を象徴してきた
  • 現代では電子機器や医療など、私たちの生活を支えている
  • 経済が不安定な時代には、投資資産として注目を集めている

あなたが日常で手にするアクセサリーやスマートフォンの中にも、数千年の歴史と先端科学を背負った金が輝いているのです。

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